ボイストレーナーのさきです。
今日はミックスボイスについて書いていこうと思います。
文字だけでは分かりにくいところもあると思いますが、参考になればと思います。
ミックスボイスとは
そもそもは「声区の融合」を意味しており、現在では主に(ファルセットでない声という意味での)胸声区で高い音を出すための技術として捉えられている。(Wikipediaより)
なんだかよく分からない説明が掲げられていますね笑。
ミックスボイスとはミドルボイスとも言われる声の種類を指しますが、定義付けは限りなく難しいところにあります。理由の一つに、声は目に見えるものではないので、今のは地声!今のは裏声!今のはミックスボイス!などと線引きするのが難しいということが挙げられます。
というのも、ミックスボイスの特徴は、一般的に裏声で出すような高い音域を地声のように聞かせるというものであるため、聞こえてくる声がミックスボイスかどうか、一筋縄では判断できないからです。
平井堅さんやコブクロの黒田さんなんかは、伸びやかに高音を歌っていますが、彼らは上手くミックスボイスを用いて、裏声になる前の音域を歌っています。ミックスボイスを上手く操れるようになると、声域が広くなったように聞かせることができます。
地声と裏声
普段私たちが話す時に使っている声が地声と呼ばれるものです。そして、息の量を増やして、声帯の力を抜いてフワッと出すような声が裏声(透声)と呼ばれます。人はみんな、声域にチェンジポイントがあるのですが、そのチェンジする音の高さより低い声が地声、チェンジより高い声が裏声です。
地声も裏声も声帯を振動させて声を発していることに変わりはありません。ここで、発声の仕組みについて少しお話しします。
参照:http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/112500015/?P=2
左の図のように、声を出しているときは声帯の2枚の辺が閉じています。そして、声を出していないときは右の図のように声帯が開いています。この2枚の声帯が触れることによって声を作り出しているのです。
芯のある息漏れのない声というのは、遠くまで届きやすく、また歌声になった時もピッチが安定したり言葉がクリアに聞こえます。息漏れは2枚の声帯がぴたっと閉じていない状態で、声帯の間に隙間ができてしまっているまま声を出すと起こります。内緒話なんかをイメージしてもらうと息漏れは分かりやすいと思います。
イメージとしては、この息漏れが比較的少ない声が地声で、息漏れが多く聞き取れるような高い声が裏声になります。
ミックスボイスはこんな声
ミックスボイスは地声と裏声の間、と認識されている方が多いと思いますが、それも間違ってはいません。しかし、ただ地声と裏声を混ぜる、とイメージしてもどんな風に発声すればいいか分からないですよね。
先ほども述べたように、ミックスボイスとは裏声で出すような高い音域を地声のように聞かせるための手法なので、声域のチェンジポイント辺りから息漏れを限りなくなくすよう意識することで、裏声の声域も地声のように聞かせることができます。
息漏れのある声を出し続けると、声帯の隙間の空気の通り道が乾燥して、声帯の一部の炎症やトラブル、悪化するとポリープができてしまうことなどに繋がります。声が枯れるという現象は、この声帯の乾燥からきているのです。
無理な発声で話し続けたり大声を出したり歌ったりすると、声帯の一部が乾燥して、その部分を痛めてしまいます。手などの皮膚が乾燥してひび割れやあかぎれを起こすのと同じようなことが声帯でもおこっているのです。
息漏れをなくしてミックスボイスを上手く使えるようになると、しっかりした声で歌える声域が広がるだけでなく、声帯のトラブルをなくすことにも繋がるのです。
一般的なトレーニングの紹介
現役声楽家の私がボイトレの裏側を語りますでも少し触れたのですが、発声に関する悩みや体の状態などは人によって違いますし、更に声帯の長さも分厚さも大きさも人によって異なります。(声帯の形や状態などは、声帯を内視鏡で見てくれる耳鼻科などに行けばチェックしてもらえます)
なので、こちらで紹介する方法だけでは完璧にミックスボイスを習得できるとは限りませんので、そこは理解した上で読んでくださいね。
ミックスボイスの練習法
①小さい声でもいいので息漏れのない声で「アイウエオ」
先ほど、地声は比較的息漏れが少ないと記述しましたが、自分の声に耳をすますと、かすかにシャーと息漏れの音がしている人がほとんどです。まずはこの息漏れをなくしましょう。大切なのは、息の量の調節です。多くの人が息を多く出しすぎていることによって息漏れしています。少し息を少なめにして、息漏れのない声でしゃべってみましょう。
②息漏れのない声で「アー」
ここでも音はつけず、まず話し声を伸ばす感覚でアーと声を出してみましょう。これも大きな声でなくでいいです。大切なのは、息漏れをなくすことです。地声で息漏れしてしまうと、ミックスボイスや裏声でも息漏れしてしまいますので、根気よくチャレンジしてみてください。
③音程にのせて「アー」
ピアノやスマホのピアノ鍵盤のアプリなどで、低い方から順番に音を弾いて、その音に合わせて声を伸ばしてみましょう。この時も大きな声でなくていいので息漏れのない声で伸ばし続けるようにしましょう。同じ声の大きさで伸ばすようにすると、横隔膜も鍛えられます。
④高い音になってきても高いと思わない
先ほどの音に合わせてだんだん高い音程で発声していきますが、声帯は神経と密接に関係しているので、音域が高いと思うと固くなってしまいます。鼻からゆっくり息を吸ってリラックスして、低音と同じような声の出し方をイメージしましょう。
⑤練習は出しやすい母音で
「アー」で発声するより他の母音の方が出しやすい場合は他の母音で練習しましょう。一人一人得意な母音というのがありますので、レッスンでは個々にどの母音が合っているか提示していますが、ひとまず自分が出しやすいと思う母音で練習してみてください。
この①〜⑤を一つずつできるようにしていってください。急に息漏れのない感覚を培うのは容易ではないと思いますが、意識していくと変化するはずです。高い声になっても、息漏れをなくして芯の通った声を出せるようになると、楽に歌えるようにもなります。是非実践してみてください。